--  美術史博物館 --


美術史博物館は、ルーヴル、プラドと並ぶ欧州3大美術館のひとつ。





絵画、彫刻、工芸品など、16世紀以来のハプスブルク家の膨大なコレクションを
所蔵し、世界最多の点数を誇るブリューゲルをはじめ、フェルメール、
デューラー、ラファエロなどの傑作が展示されている。










マリア・テレジア像

マリア・テレジアの手が伸びている方が、「美術史博物館」。









































まるでこの建物自体が、ひとつの芸術作品のよう...。
















さっそく2階へ...












壮麗な階段を上ると、この建物自体が芸術品だという証をさっそく目の当たりにする。













中央階段真上に描かれた天井画にため息...

ハンガリーの画家、ムンカーテ・ミハーイによる壮大な天井画。














出迎えてくれたのは、階段ホール上の天井画から続く美しい壁画群。














そしてこちらは、階段ホール壁画作品群の一画にあるクリムトの壁画。

「パラス・アテネ・古代ギリシャ美術の女神」

(もうひとつ古代エジプト美術の女神が対になっている)








館内に入った最初の段階で早くも、すばらしい圧巻の芸術作品に衝撃を受ける。



二人ともしばらくそこから動けず、彼はカメラを構えてシャッターを切る。
私はただただ感嘆のため息をもらしながら、偉大なる芸術家の壁画に見惚れるばかり。


いくつもの時代を超えて、長い間、どれほど多くの人々の歓喜と称賛を浴びてきたことだろう。

こんなにも長い歳月が流れているのに、その美しさ、その価値はひとつも色褪せていない。


これが真の芸術というものなのだと、見事に魅せられた気がした。























やわらかな光が降りそそぐ優美なる世界...

心底、幸福感が満ち満ちてくる瞬間。
















左のレリーフは、もしかしてフェルメールの「絵画芸術」がモデル?・・・。













見上げては溜息の連続...圧巻です!










こちらの美術館の私たちのお目当ては、フェルメールの「絵画芸術」やブリューゲルの
「バベルの塔」などたくさんあるけれど、その中でも特に私たちが見たかったのは、
ベラスケスが描いた「マルガリータ王女」の三連作でした。

ちいさな王女様..彼女にとても逢いたかったのです。







いよいよ展示室へ。

いくつかの部屋に分かれて、数えきれないほどの作品が展示されていました。

彼は、ブリューゲルの「バベルの塔」の絵の前で、また立ち止まって動けなくなり、
私は私で、バロック・ロココ絵画のコレクションの中に、いくつかお気に入りをみつけました。

あのフェルメールの「絵画芸術」も、しっかり鑑賞してきました☆
















主に個人的に好きな絵を撮ってきました☆


































「バベルの塔」 ビーテル・ブリューゲル (1563年)


うわっ!「バベルの塔」が傾いているではありませんか!

カメラマンよ(彼)、しっかりしてください!!(笑)













ここでも麗しのマリー・アントワネットに出逢えて、嬉しいです♪
















館内にはこんなにお洒落なカフェが♪











デザイン性の高いこんなお洒落なカフェなら、是非ともお茶したい!

..そう思ったのですが、残念ながら私たちはつい今さっきまで、
カフェ 「ツェントラル」でお茶してきたばかりだったのです。残念...。












さすが、お洒落なウィーンのカフェ!


いつもなら、まだまだおなかに余裕があるはずなのに、あぁ、残念ですぅ...
なぜかな、旅行中って、やっぱり緊張しているからか、思ったより正直
食べられないものですね..この次来たときは絶対、ゆっくりティータイムする!

そう心に誓った私なのでした。











かなりの時間を費やして、ようやくベラスケスの作品の部屋までたどり着きました。

思わず、「あぁ...」と声が出てしまう。

ちいさなマルガリータ王女に出逢えた嬉しさと、
その憂いを帯びた表情に、胸がぎゅっとなった。






「バラ色のドレスのマルガリータ」
ディエゴ・ベラスケス (1653、54年)



マルガリータ王女は、幼さの残る第一作目から、5歳のとき、8歳のときと、3枚もの
肖像画を描いてもらって、幸せだったのかな...おそらくきっと、普通の子たちは
そんな大そうなものを描いてもらえなかっただろう。

しかし彼女のその表情は、どこか寂しげになにかを訴えている。

そんな気がして...。


本当は王女の肩書のもとではなく、同年代の普通の子たちのように自然の中を
駆けまわって、おてんば娘として幼少期を過ごしたかったのかな...
それとも...彼女はどう生きたかったのだろう...。


私はそんなことを思いながら、静かに肖像画を見つめていました。






「白いドレスのマルガリータ」
ディエゴ・ベラスケス (1656年)

5歳のマルガリータ王女の肖像画。

(写真がボケ気味になってしまった..泣)





このマルガリータ王女の三連作は、スペイン王室からマルガリータ王女が嫁ぐ
ことになっていたウィーンの宮廷へ王女の成長ぶりを伝えた肖像画で、
いわば、今でいうお見合い写真のような意味もあったのだそう。


とびきり豪華な上等なドレスを着て、あどけない表情で、宮廷画家の前で
一生懸命ポーズをとる幼いマルガリータ王女を想像した。


その姿は見るからに病弱そうで、口元にも瞳の中にも、少女らしい愛らしい笑み
ひとつない。そこにあるのは、緊張感と不安に包まれたどことなく寂しげな表情...


当時のこうした形式の肖像画には、微笑など不要なものだったのかもしれない。
ただ、たとえ笑顔でなくとも、真顔でも、その年頃の少女の内側からにじみ出る
明るい輝きのようなものは、抑えることができない。自然とあふれ出てしまうもの。


そうしたものすべてを心の奥深くにすっかりしまい込んでしまったような、
どこかさみしさを感じさせる儚い王女の表情は、ことさら、
私の心をつかんで放さなかった。



おそらくまだ、政略結婚の本当の意味も、恋のときめきも、
理解しえない年頃なのに..そう思うと、胸が切なくなった。


彼女は自分の運命を憂いただろうか...。


いや、もしかしたら、彼女は王女として生まれた自分の役目をしっかり受け止め、
本当はなにもかもちゃんと理解していたのかもしれない...


あの青いドレスを身に付け、宮廷画家の前に立ったあの日..。






「青いドレスの王女マルガリータ」
ディエゴ・ベラスケス (1659年)


スペイン国王フェリペ4世の娘マルガリータが8歳のときのポートレート。
宮廷画家ベラスケスが、亡くなる1年前に描いた作品。








その後、マルガリータ王女は13歳で、11歳年上の叔父にあたるレオポルト1世に嫁ぐ。

そして、22歳の若さでこの世を去った。


その儚い人生に胸をぎゅっとつかまれる思いがした。






ホテルに帰り、ベッドの上で買い求めたマルガリータ王女のポストカードを取り出した。


ようやく王女という重荷から解き放たれた彼女に..今、私の目の前に立っている
あどけない可愛らしい少女に、私はそっと優しくほほ笑みかけた..。































       --  ミノリーテン教会 --


 この教会を訪れた日は、ウィーンに数日滞在して、そこからプラハに行き、
プラハで数日過ごして、ふたたびウィーンに戻って来た日でした。

明日は帰国になるから、事実上、ウィーンの街を楽しめる最終日。






こちらはミヒャエラ―教会。

ゴシック、バロック、ロマネスクなど多数の様式が混合する
たいへん美しい教会だそうなので、次回は必ず行きたいと思います。








私たちが今日目指すのは、「ミノリーテン教会」。





フランチェスコ教会の修道士が建設をはじめ、紆余曲折を経て1350年に完成。

建物正面は印象的な切妻造り。







こちらの「ミノリーテン教会」は、いろんな意味で印象深い想い出の教会となりました。

この教会へは、彼がどうしても見てみたい絵が飾られているというので、
是が非でも行こうということに決まったのです。


教会の中へ入って行くと、ちょうど礼拝の最中でしたので、ほかの見学目的の人たちも
いましたが、礼拝の邪魔をしてはいけないと思い、私たちは空いている席に座りました。













しばらくして、神父様のお話が終わり、皆立ち上がり始めました。

そして、教会内の見学の人たちも次々と入ってきました。


皆一同にある絵の前に陣取ると、カメラを構えました。


そう、それは、「最後の晩餐」のモザイク画。

その作品を私たちも、ぜひ見たかったのです!



混雑が引いたら、私たちも写真を撮ろうと、そろそろカメラを出そうと
したのですが、それが..そのカメラがないのです!

「カメラがない!」


彼は慌てて鞄の中、ジャケットのポケットの中、あらゆるところを探しました。

ところが、どこを探してもないのです!


もう一度落ち着いて探そうと、さっきまで座っていた席の机の上、椅子の下をくまなく
確認し、しまいには、机の上に鞄の中の物すべてを出して、入ってないか調べました。

...が、ない!どこにもないのです!

「カメラがない! カメラがない!!」


ここに来るまでの、考えうる行動を思い出してみました。
もしかしたら、窃盗にあったのでは..と頭によぎりました。


旅の出発前、旅行ガイドやネットで、カメラを盗まれてしまったという記事を
いくつも読んだことを思い出したのです。でも..そんな人混みには行っていないし、
ここへ来るにも、人通りの少ない道を通って来た。


それに、むしろ、笑顔で道を教えてくれたり親切な人ばかりだった。

人を疑う前に、自分たちの落ち度を責めるべきだ!

でも、どうしてもこうしても、いっこうにカメラは見つからない!


なかば私は半狂乱になりながら、心の中で何度も天国の
おじいちゃまとおばあちゃまにメッセージを送りました。


ヨーロッパの国々が大好きで、各国を巡り、
アルバムに素敵な写真をいっぱい遺してくれた二人。


「一度とは言わず、機会があったら何度も行くといいよ」

「本当に美しい街並みだから」と、子供の時から私に話して聞かせてくれた。


「あぁ、おじいちゃま、おばあちゃま、たすけて!!」


初日に行ったウィーンの宮殿やカフェの写真も、そして次に訪れた世界遺産プラハの
美しい街並み、プラハ城、カレル橋での夏の青空を背景に撮ったベストショットも...
なにもかも、すべて無くなってしまったのだ..そう思うと、悲しくて、悔しくて、涙が出てきた。




そのとき、ひとりの老婦人がどこからか現れ、私たちのほうをずっと見つめていました。

そして、とっさに何かを悟ると、私たちにこっちに来るよう手招きしたのです。


そして老婦人―そのおばあちゃまは、教会の方のもとに行って、何かを告げ、
その教会の人は奥の部屋に行って、すぐ戻ってきました。


なにか箱のようなものを持って、私たちのもとに来てくれました。

おそらくその箱は、落とし物ボックスのようなものだと思います。


そこから、「あなたの探しているものは、これですか?」と訊きながら、
ひとつずつ物を取り出していきました。


首を横に振り続け、そして次の瞬間、見覚えのあるケースが!


でも同じようなカメラケースは他にもあるから..と思い、緊張しながら
祈るような気持ちで中を確認すると、間違いなく私たちのカメラでした!!


驚きと嬉しさで、急に堪えていた感情が爆発したように、
なんと私は、号泣してしまったのです。


泣きそうになった、涙ぐんでしまったという程度のものではなく、本泣き..
人目もはばからず、私は子供のようにわっと泣いてしまったのです。


すると、その場にいた人たち― おそらく地元の人たち、赤ちゃんを連れた若夫婦、
その場に居合わせた皆一同が、「うん、うん、わかるよ」と頷きながら、
カメラが見つかったことを、私たちと一緒に喜んでくれたのです。


本当に、本当に嬉しかったです。


国も言葉も違う人たちがこうして、共感してくださったこと、
一緒になって心配してくださったこと、本当にこのときほど
人々の温かさを感じたことはありませんでした。


私たちは、皆にお礼を言って、教会の方にも、
そして、あのおばあちゃまにも...


あのとき、お礼を言ったつもりだけど、カメラが見つかって歓喜と興奮が入り交ざった
高ぶった感情の中で、あのおばあちゃまにきちんお礼を言えていたかどうか...


だから、すぐにあらためてお礼を伝えようとしたのですが、不思議なことに、
あの老婦人の姿は、教会のどこを探してもありませんでした。



しばらくして気持ちが落ち着くと、ふたり一斉に口をついて出ました。

「なかば諦めていたのに...本当に、奇跡のような不思議なことが起きたね」


単に、落とし物をして落とし物ボックスから運よく見つかった、
それだけのことかもしれない...。


もちろん、自分たちの不注意にじゅうぶん反省しました。


でも..あのおばあちゃまがいなかったら、私たちは救われなかった。


あのおばあちゃまは、いったいどこから現れたのだろう..入り口のほうからでは
なかった。気がついたら、慌てふためいている私たちのほうをじっと見つめていた。

そして、「こっちに来なさい」と、手招きしてくれた。


カメラが見つかったお礼を言おうとしたら、もうその老婦人の姿はなかった。

瞬く間に現れて、一瞬で消えて行った...。


もしかしたら、天国のおじいちゃまとおばあちゃまが見かねて、
天から遣わしてくださったのかもしれない..そう思いました。


どちらにせよ、運命の針はよい方向に動いたのだ。


救ってもらったのだという念と、見守ってくれているという思いに、
嬉しさがいっそうこみ上げたのでした。











あぁ・・・本当に本当に、感謝の言葉しかありません。











「最後の晩餐」のモザイク画。


この目でしっかり見て、そして無事カメラに収めてくることができました。















華やかなバロック様式の教会とはまたちがった厳かな美しさが在る、
印象に残る教会でした。

























救ってくださったこと、心から感謝しています。

今日のことは決して忘れません。














そして...

この日のことは、今もこの胸に刻まれている。