--  ベルヴェデーレ宮殿 --


ウィーンに来てから、私の胸は連日、高鳴り続けている。

私の好みど真ん中!の、この上なく美しい壮麗なバロック、ロココの世界...

すばらしい建造物を毎日のように連続して見学しているのだから、それも無理はない。

今日の高鳴りはまた特別なものになりそうだ。


「ベルヴェデーレ宮殿」、その名を聞いただけで、私の心はときめき熱を帯び、鼓動が高鳴った。

その胸の高鳴りを静めるどころか、さらに勢いづけるべく、私たちは早めのお茶をしに、
カフェへと向かった。そこでの至福のひとときは、カフェ編をご覧いただけたらと思います。

シシィを意識してスミレ色のワンピースに身を包んだことも、運のツキを呼んだかどうかは
さておき、運良く目の前にオペラ座が見える窓際の席で、まさに至福のティータイムを過ごした。




さて、いざ、「ベルヴェデーレ宮殿」へ。
私たちはトラムに乗って向かった。
























いよいよ入り口の門が見えてきた。








頭上でいたずらにほほ笑む天使の門をくぐった瞬間から、すばらしい時間はすでに始まっていた。























































「ベルヴェデーレ宮殿」

対オスマントルコ戦など功を成した軍人オイゲン公が、ヨハン・ルーカス・フォン・ヒルデブラント

造らせたバロック様式建築の夏の離宮。上官は1720~23年に建てられた。


グスタフ・クリムトの作品などを収蔵する19、20世紀絵画館。





























上官と下官(バロック美術館)の間にある庭園には、美しい女性のスフィンクス像が点在している。

















あまりにも空の青と、壮麗な宮殿の外観が美しかったので、中に入る前に外でたくさん
写真や動画を撮りました。HP用の納得いくすてきな一枚が撮れたと思ったそのとき、

空からぽつぽつと、雨が降り出しました。

あぁ、残念..自分用の写真が撮りたかったのに...

でも、このあとふたたび、あのいたずらな天使がほほ笑み返してくれたのです!

それはのちほど..。



さあ、ここへ来たいちばんのメインテーマ、すばらしい巨匠たちの絵画を観る!
ということ、それを忘れてはいけません。




館内に入ると、そこかしこに施されたバロック、ロココ様式の美しい内部装飾に、
一気に、麗しき時代へタイムトリップ♪























感嘆のため息の嵐...
あぁ、このまま「美」の激しい雨に打たれ続け、ここに留まっていたい..。





































































有名な「アルプス越えのナポレオン」の作品。























華麗な中に厳かな雰囲気が漂います。






























圧巻の一言...言葉を失います。













見上げていると、こちらの心まで天昇してゆくようです..。



























さまざまな美しい絵画を鑑賞し、「美」の洗礼を受け、
いよいよ、お目当てのクリムトの作品の前に立った。






「ユディット」 (1901年)

敵を倒す聖書のヒロイン(将軍の首を切り落とし街を救った女性)を描いた、クリムトの代表作。


ユディットの雄姿よりも、恍惚とした表情を前面に押し出し、官能美と死のモチーフを
描いた。甘美で退廃的な作品は、当時の観衆を驚愕させたと云われる。

















「私はどう?いかがかしら?」とでも言っているようで、しかし、彼女のその目は
こちらの存在なんて、まるで捉えていない。

彼女はもっと遥か先の大きな世界を見ている..見据えている。

彼女と向き合えるのは、彼女に匹敵するぐらいのおなじ強さ―恐れを知らない
己の芯の強さ、魔性の魅力で相手を惑わし狂わす、己の中の美しき神秘性..

それらすべてを自分が持っていることを、彼女は知っている。

それが自分という存在をさらに際立たせ、輝かせていることも。

他を一切寄せつかせない強みだということも。

鳥肌が立つほどの感動の震えを抑え、なおも私はユディットを見つめ続けた。

まるでその妖艶な貌は、すべてを超越して、こちらを嘲笑しているかのようだ。



恍惚の微笑を浮かべた「ユディット」をじっと見つめていると、身動きが
とれないみたいに、心を掴まれ、固まってしまった...。

この絵はたしかに美しい、なにか不思議な魅力で観る者を誘惑する..

それは単に美しくすばらしいという種のものとはちがう、なにか分からぬ恐ろしさと
美しき幻想の狭間で心は惑わされ、混乱し、私はしばらくそこを動くことはできなかった。















パトロンを描いた作品とされる「フリッツア・リードラーの肖像」
(1906年)

背景、そこかしこに分離派独特の装飾が施されている。















「ソーニャ・クニップス」 (1898年)
クリムト38歳のときの初の大型肖像画。
















「接吻」 (1908年)

クリムトの最高傑作。


作品の創作、私生活ともに最も充実した時期に制作された。

「死」と隣り合わせにある「愛」をテーマにし、どこかはかない恍惚の
永遠のような一瞬を感じさせると評された。

クリムト自身と恋人エミーリエがモデルとなっている。


美しい金箔の衣装と、独特な官能的な表現は、当時キリスト教の
道徳観に抑圧されていた民衆に、熱狂的に支持されたと云われている。







偉大なる芸術家クリムトの「接吻」..愛し合うことの儚さ、
尊さを感じさせ、あらためて深く考えさせられた。

「恋」だとか「愛」だとか、一言では言い表せない「熱情」のような
激しさ..狂おしさ..。


あぁ、まだ胸がドキドキしている...


でもこの広い世界で出逢い、愛し合うふたりは本当に美しい。

それはこの絵が描かれた時代も、今の時代も変わらない...





胸の高鳴りを静めるべく外に出ると、すっかり雨は上がり、
青く晴れ渡った夏空が広がっていた。






晴れているうちにと、ここぞとばかり写真を撮りまくりました。









青空の下、美しい庭園をバックにシャッターを切る。
























青空を背景にスフィンクス像も、お美しい!









































「ベルヴェデーレ」、ラテン語で「美しい眺め」というその名に相応しい壮麗な外観。








さっきまで池のまわりにあんなに人がいたのに、うそのように誰もいなくなった。

今がシャッターチャンスと思い、宮殿をバックに池の前に立って、エレガンスを
気取って日傘をさし、何枚も写真を撮ってもらいました。

数枚撮れば、さすがにその中の何枚かは満足のいくものがあるだろうと..(笑)

おかげで彼はカメラ片手に大忙しでした!


でも晴れてくれて、ほんとうに良かった、ステキな写真がたくさん撮れました♪

いたずらな天使が、ふたたびほほ笑んでくれたのですね☆




















最後にもう一度ふり返ると、まるで湖の中に建っているような宮殿の壮麗な美しさに、
またもや圧倒され、息を吞む...。








そこに住まう偉大なる芸術家たちの残した「美」の結晶、麗しきミューズたちに
別れを告げ、宮殿をあとにしたのでした。