毎年、クリスマスが近づくと思い出すのは、祖父が一緒に連れて行ってくれた
華やかなクリスマスパーティーのこと。
祖父の仕事関係の仲間で形成されたグループで開かれた、クリスマスパーティー。

これまで色々なクリスマスパーティーには何度か行きましたが、
あのクリスマスの夜ほど心に深く残るものはありませんでした。


毎年デザインを変えて母が作ってくれたドレスを着て行くのを、とても楽しみにしていた私。
ビロード生地にビーズやスパンコールがいっぱい付いた華やかなドレスに身を包むと、
「さあ これからパーティが始まるんだ!」 という緊張感の中にも、
胸が高鳴るような心地よさを感じていたのを、今でも覚えています。


粉雪の舞い降りる、まさにクリスマスにふさわしい銀世界に包まれながら車に乗り、
木々に囲まれた道をしばらく行くと、森の中にひっそりとたたずむホテルが現れました。

私はこれから始まることを想像しただけで、わくわくする胸を抑えきれなくなっていましたが、
私の興味はもうひとつ別の方に。。。。

目の覚めるようなブルーや赤、シックなブラック、淡いパステルカラー。。
思い思いのドレスを着飾って、男性にエスコートされて会場入りする女性たちの姿が。。。
いつか私もあんなふうに華やかなドレスを身に着けてさっそうと歩く女性になりたいと、
幼いながらも小さなおしゃれ心を燃やしていました。



会場に入ると目の前には、この日のために用意されたたくさんの豪華なお料理やデザートの数々。。
おとなたちの中に私と姉はちょこんと混ざって、目を輝かせていました。

。。と言ってもこの豪華なお料理はもちろん、おとなたちの口に合うようにリキュールやスパイスを
効かせて味付けされていて、当然子供の私たち二人には合うはずもありませんでした。

姉はなぜかブランデーの効いたブラウンソースの中のミートボールだけを、おいしそうに食べていました。
私はというと、生ハムに添えられたメロンだけを取って満足げに味わっていました。
今や、生ハムは私の大好物となっているので、とんでもないことをしたと反省しているのです。


ワインやシャンパンが次から次へとグラスにつがれて。。
あちらこちらから弾むおしゃべりが耳に入ってきて。。
音楽にも似た心地よい時間が流れていきました。

時おり、ふわっと甘く優しく香る、香水の香りに、
眩しいくらいのシャンデリアやジュエリーのきらめきに、
カチャカチャとワイングラスの触れあう音に、
私は何とも言えない幻想的な光景を描いていました。




食事が一段落すると、待ちに待ったプレゼント交換です。
くじを引くまで何が当たるか分からないのですが、昔もそうでしたが、
視線が一点に集中してみんなの期待を背負う気がするので、
どうも今もくじ引きは苦手な私です。

そして私が引き当てたもの。。おとなの喜びそうなシックな革張りのスケジュール帳。
もちろん子供の私はうれしいはずもなく。。。。

肩を落として振り向いたら、祖父が楽しそうに笑っているのが見えました。
その笑顔を見たら、なぜか心がふっと軽くなって、私もなんだかうれしくなったのです。

その後もこの毎年恒例のおとなたちが楽しみにしているくじ引きで、
私が満足することは結局ありませんでした。
象牙の箸セット。。。。。これはいったい?!
幼なかった私には価値などわかるはずもなく、きっと肩を落としていたことでしょう。


このクリスマスパーティも回を重ねるごとに、少しずつ私たちぐらいの子供たちの
参加も増えてきて、ついに子供たち用のプレゼントが用意されたのです。
サンタさんから一人一人に手渡された、キャンディーのように透きとおったビーズセット♪


パーティも終盤になるにつれ、満たされて家路に着く人たちの姿が。。。
いよいよ終わりを告げようとしています。
ちょっぴりさみしい思いを残しながら、私たちも会場を後にしました。
家へと向かう車の中で、私は目を閉じながら、
あの眩しい光りの中で舞う、色とりどりの華やかなドレスを、
何度も何度も思い出していました。




こうして私の夢のようなすてきな時間に、幕が降りて行きました。
祖父が連れて行ってくれた、クリスマスパーティー。。。
それは幼い私の心に、思い出以上の感動を残してくれました。



そして今年の10月。
木の葉が赤や黄色に色づきはじめた秋の訪れとともに、
あたり一面秋一色のおだやかな光に包まれながら、
祖父は安らかに天国へと旅立って行きました。

そんな祖父が残してくれた、思いがけないプレゼント。
私の父がそっと手渡してくれたポストカードアルバム。

それは祖父のお父様がイギリスにいた頃、
親しい方々から送られたポストカードを、一枚一枚大切にしまわれていたアルバム。


アルバムのまわりの紙は長い年月と共に茶色く変色していましたが、
セピア色のポストカードの中に、残されたインクの跡に、
会ったことのないひいおじいさまの姿が浮かび上がってきそうな気がして、
ひいおじいさまや祖父がどんな思いでこのアルバムを眺めていたのかと思うと、
心にジーンときて、胸が熱くなりました。


 








ひいおじいさまから祖父、祖父から私の父へと、
そして今、私のもとへ、時を経て贈られた
代々受け継がれてきた、大切なポストカードアルバム。


それは宝石ほどの輝きはないけれど、

私には何ものにもかえがたい、

きらめく愛情のいっぱい詰まった

今年最高のおくりものになりました。